国土交通省は、大江戸線全線開通ケースから見たバリアフリーの社会的効果に関する調査についての結果を公表した。
都営大江戸線は、全駅において、地上出入口から改札、改札からホームまでエレベーターが設置されている。
また、要望がない限り、原則駅員が介助していないため、移動制約者が、自己責任の下に自由に移動できる環境が仕組みとして整っていることから、高齢者や障害者等にとって、公共交通の利用環境が格段に向上したことが予想されている。
今回の調査では、障害者へのヒアリング調査からバリアフリー路線の開通に伴う障害者の生活環境が具体的にどのように変化したかを明らかにしている。
障害者へのヒアリング調査は、大江戸線を利用している手動車いす使用者3名、電動車いす利用者使用者6名、肢体不自由者2名、視覚障害者13名、高齢者2名、介助関係者2名に対して実施。
また、大江戸線全駅へのアンケート調査により、駅員の日常業務におけるバリアフリー業務がどのように変化しているかを明らかにしている。
大江戸線は、1日あたり目標乗車数を82万人と掲げて開業したが、開業当初は39万人あまりにとどまっていた。開業半年となる6月には52万人まで乗車数をのばしているが、目標数には達していない。
車いす使用者の大江戸線利用数は小幅ながら、増加傾向にあり、2001年8月は、1,780人の車いす利用者が大江戸線を利用している。大江戸線では、車いす利用者が、利用者1万人あたり34.6件と、浅草線の3.3件、3田線の13.2件、新宿線の25.4件を上回っている。全駅バリアフリー化に至っていない他の都営線と比べ、数多くの車いす使用者が大江戸線を利用していることがわかる。
大江戸線のバリアフリー化の特徴は、全駅で地上〜改札、改札〜ホームにエレベーターを設置、多くの駅で、車両の車いすスペースに近いホーム降車位置にエレベーターを設置、電車への段差・隙間も比較的小さく、車いす利用者の自力乗降が可能、要望がない限り駅員が介助をおこなっていない、全駅に車いす対応の多機能トイレを設置、ホームの壁面駅名表示の下部で入線案内の文字表示が点滅−−など。
大江戸線のバリアフリー化の社会的効果を、大江戸線利用者等の声からみると、身体障害者などの、自由な外出機会の増加、消費活動の活発化、就業機会の拡大、障害者の意識の変化などがあげられる。
利用者の声をみると、「家族・駅員の介助がいらず、単独で自由に外出できるようになった」「タクシー代などの出費が減り、お金の使い方の選択肢が広がった」「大江戸線のように、全駅バリアフリー化されていれば、電車を使っての通勤も可能になるのでは」「車いす利用者もただの人になれ、自己責任を意識するようになった」などがある。
そのほか、家族や介助者の負担軽減として、「1日中家にいることがなくなり、家族の精神衛生も良くなったのではないか」。駅職員のバリアフリー業務に係る負担の軽減として、「駅員と障害をもった乗客との間に心のゆとりが生まれている」。一般の利用者へのノーマライゼーション思想の浸透として、「鉄道の風景が変わった。車いすで電車に乗り込む時、周りの人が視線を送ってくれ、手を出してくれそうな雰囲気を感じるようになった。」−−などの声があった。
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