厚生労働省は、「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」の中間とりまとめを公表した。
厚生労働大臣が主宰する「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議」では、昨年4月から、年齢にかかわりなく働ける社会の姿とそのための条件整備の在り方についての検討を進めてきた。
検討にあたっては、高齢期に限らず、採用から退職までの雇用システム全体について取り上げることとし、学識経験者と労使の実務担当者からなる研究会を設けて、各分野にわたる検討を行った。
まず、「検討の視点」としては、中高年労働者の深刻な雇用状況、環境変化に対応するための企業経営上の必要性、多様な働き方を求める労働者の就業意識の変化、人口の高齢化と労働力の減少が進む社会全体という背景を踏まえれば、過度に年齢に偏った現行の雇用システムを見直し、年齢にかかわりなく能力を発揮して働ける社会を作り上げていくことが必要とした。
「年齢よりも能力を評価軸とする社会、雇用システムの構築」では、各人の有する能力が明確かつ公正な基準で評価され、雇用・処遇される、より柔軟な雇用システムに転換することが必要とした。そのためには、職務をより明確化するともに、それに基づいた能力評価システムを労働市場に根づかせていくことが必要とした。
「多様な能力を最大限に活かす働き方を選べる社会、雇用システムの構築」では、年齢にかかわりなく働ける社会とは、各人の多様な能力を最大限活かせる働き方を、個人がその価値観に基づいて選べ、生きがいを持って活躍できる社会であるべきで、このため、能力やニーズに応じた多様な雇用形態、さらには自営開業、ボランティアなど、より幅広い働き方を可能とする環境整備が必要とした。
「職務の明確化と社会的能力評価システムの確立」では、官民が協力して、ホワイトカラーを含めて職務ごとに必要な能力について分析した結果を踏まえて能力評価手法を整備し、それを基礎として各業種ごとに能力評価の具体的な基準を作成することにより、包括的な能力評価制度を整備することが必要とし、労働者のキャリア形成を図るため、キャリアカウンセリングを通じた動機付けや能力の棚卸し等についての政策的支援が必要とした。
「賃金・人事処遇制度の見直し」では、職務に必要な能力や成果を重視するという観点から、仕事内容や職務特性、あるいはキャリア形成の段階に応じた、より複線的・多元的な賃金・人事処遇制度の確立を目指すべきで、業種や職種ごとの特性を踏まえ、短期的な業績のみに偏ることなく、長期と短期のバランスのとれた評価・処遇システムを確立していくための工夫が必要とした。
「能力を活かした多様な働き方を可能とする環境整備」では、長期化する職業生活の中で労働時間の配分の在り方を見直し、個人のライフスタイルやライフステージに応じた多様な働き方の確立が必要とした。その際、ワークシェアリングを含めて関係者が十分議論し、合意形成に努めることが重要とした。
また、常用フルタイム以外の労働者が意欲を持って働くことができるよう、わが国の仕事の組み立て方や処遇の仕組みも踏まえた公正な処遇の確立に向けて、パートタイム労働に関するガイドラインを策定するなど環境整備に努めるべきで、パートタイム労働者への厚生年金の適用拡大の検討が必要とした。
さらに、退職金にかかる所得税控除、在職老齢年金制度の検討や、労働者派遣、有期雇用、裁量労働制の在り方の検討、シルバー人材センターの強化、自営開業への支援、NPOでの雇用・就業、ボランティア活動に関する情報提供等が必要とした。
「採用と退職にかかわる条件整備」では、年齢制限緩和のための指針の確実な運用と内容の見直しが必要で、将来的には、年齢制限を課す必要性について事業主の説明責任をより強化する、さらには年齢制限について原則禁止とすることを検討するべきとの意見があるいっぽう、こうした措置を講じるのであれば、解雇を含めた退職の在り方についてもあわせて検討すべきとした。
また、紹介予定派遣や常用目的紹介の普及が、ミスマッチの解消に有効で、団塊の世代の高齢化や厚生年金の支給開始年齢の引上げを踏まえ、65歳までの雇用確保に向けたアクションプランを設定するとともに、その達成に向けた対策を強化するべきとした。
さらに、定年制については、能力のある高齢者の活用の妨げとなっているので将来的には廃止すべきという意見があるいっぽう、労働者の生活の安定や企業の雇用管理上の目安として今後も果たすべき重要な役割があるとの意見。
定年制を廃止した場合、能力評価制度が確立していない中で、解雇対象者の選定基準を設定し、対象者の納得を得ることは困難かつコストは多大で、処遇を見直して継続雇用する場合のコストと定年をなくした場合に雇用調整に要するコストを比較しつつ、退職過程全体の検討が必要とした。
年齢差別禁止というアプローチをとる必要があるとの意見があるいっぽう、年齢にかかわりなく働ける社会とは年齢差別禁止とイコールではなく、人権保障政策的観点と雇用政策的観点とを区別すべきとの意見や、年齢に代わる基準が確立されていない中では労働市場の混乱を招きかねないとの意見があった。
いずれにしても、職務内容の明確化と企業横断的な能力評価システムの確立、能力・職務を重視した賃金・人事処遇制度の普及、多様な働き方の定着などが大前提で、その上で、だれもが高齢期を迎えるという意味で年齢差別という概念が他の差別と異なる点を勘案しつつ、高齢者の雇用の促進のためにはいかなるアプローチがより効果的であるかといった観点から、総合的な検討が必要とした。
「年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けたプロセス」としては、年齢にかかわりなく働ける社会への円滑な移行のためには、条件整備のための取組を、段階的に進めていくことが重要で、年齢に過度に偏りすぎた雇用システムから、能力を評価軸とし、多様な能力を最大限に活かせる働き方を選べる雇用システムへと円滑に移行できるような条件整備のための取組みを先行させるべきとした。
「年齢差別禁止」の問題については、必ずしも十分な意見の一致が見られていないことから、様々な条件整備の進捗状況等を考慮しつつ、導入のぜひ、導入する場合の時期・条件等について、さらに国民的合意の形成に努めていくことが必要とした。
今後10年程度を、少なくとも65歳までの雇用の確保を確かなものとするとともに、将来の年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた基盤整備の期間と位置づけ、(1)職務の明確化と社会的能力評価システムの確立、(2)能力・職務を重視した賃金・人事処遇制度の普及、(3)能力を活かした多様な働き方を可能とする環境整備、(4)募集・採用時における年齢制限の是正に向けた取組などの条件整備を、政労使が一体となって進めていくことが必要とした。
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