厚生労働省は、医療保険制度が改正され、2003年4月1日から、サラリーマンの窓口負担が3割負担に変わることから、今回の改正の背景、改正後の制度の概要などをまとめたものを発表した。
現在の医療保険制度の現状は、病気やケガをしたとき、国民のだれもが医療機関に保険証を提示して、医療費の一部を負担するだけで医療を受けることができる国民皆保険制度をとっているが、急速な高齢化の進展に伴って老人医療費を中心に医療費が増大するいっぽう、経済の低迷により保険料収入は伸び悩んでいる。
医療費は、1990年には20.6兆円(うち老人医療費5.9兆円)だったものが、2000年には30.4兆円(うち老人医療費11.2兆円)と急増している。過去10年の平均伸び率をみると医療費(全体)で4.0%、その中の老人医療費は6.6%と増加。いっぽう、GDPは1.3%となっている。
このため、各医療保険制度の財政は非常に厳しい状況にあり、特に中小企業のサラリーマンやその家族(約3,600万人)の人が加入する政府管掌健康保険(政管健保)の財政は大幅な赤字が続いており、3割負担を導入しなければ、医療費の支払いが滞る状況にある。
同省では、「このような中で、国民皆保険を将来にわたり守っていくためには、保険料だけに負担を求めるのではなく、患者の人々にも相応の負担が必要で、自営業者の人などが加入する国民健康保険やサラリーマンの家族の外来はすでに窓口負担は3割となっており、サラリーマン本人の3割負担は、制度を通じた「分かりやすく公平な給付」を実現するもの」としている。
患者の窓口負担割合

また、仮に3割負担を実施しなければ、保険財政をさらに悪化させ、より大きな負担増として国民生活に影響を与えることとなり、中小企業のサラリーマンやその家族(約3,600万人)の人々を対象とした政府管掌健康保険(政管健保)については、仮に3割負担を実施しない場合、2003年度の収支は約3,400億円悪化すると見込まれる。
政管健保の2003年度予算案は、診療報酬の改定の影響などによる2002年度の医療費の減少も織り込んだ上で編成しているが、最近の保険料収入の減少などから、政管健保の財政状況は厳しい状況にあり、3割負担を導入した場合でも、2003年度における積立金は約900億円にとどまる。
このため、仮に3割負担の導入を凍結した場合には、積立金を取り崩しても、約2,500億円の穴があくことになり、2003年度には政管健保の医療費の支払いを行うことができなくなり、医療費を支払うためには、サラリーマンの人の保険料を現在予定されている引上げ(被保険者1人あたり年間約2.5万円)に加え、さらなる引上げ(同1.8万円)を行わなければならなくなる。
仮に3割負担を実施しない場合の政管健保の収支試算
| 単位:億円 |
2003年度
予算案 |
仮に3割負担を
実施しない
場合の試算 |
差額 |
| 収入 |
保険料収入 |
61,832 |
(同左) |
− |
| 国庫補助 |
8,047 |
8,400 |
+400 |
| その他 |
160 |
(同左) |
− |
| 計 |
70,039 |
70,400 |
+400 |
| 支出 |
保険給付費 |
39,228 |
42,300 |
+3,100 |
| 老人保健拠出金 |
21,581 |
(同左) |
− |
| 退職者給付拠出金 |
6,971 |
7,700 |
+700 |
| その他 |
1,265 |
(同左) |
− |
| 計 |
69,045 |
72,800 |
+3,800 |
| 単年度収支差 |
994 |
▲2,400 |
▲3,400 |
| 事業運営安定資金 |
920 |
▲2,500 |
▲3,400 |
また、3割負担導入に合わせた措置の実施として、薬剤の一部負担金(病院などで薬をもらった時に支払う定額の負担)を廃止(2003年4月実施)。3歳未満の乳幼児については、少子化対策の観点から各制度共通して2割負担としている(2002年10月実施)。
この、薬剤一部負担金の廃止により、サラリーマン本人の負担増が緩和され、サラリーマンの家族(通院)や国民健康保険の人は、従来より3割負担であることから、薬剤一部負担金の廃止により、負担は減少する。
なお、医療保険制度においては、患者負担には一定の歯止め(自己負担限度)が設けられており、一般的な所得の人では1か月当たりの限度額が72,300円(医療費が高額な場合にはプラス1%)となっており、単純に負担が2割から3割へと1.5倍になるわけではない。
自己負担限度額を超える金額が払い戻されるケースの場合、実質的な負担割合は3割より軽くなる。例えば、医療費が100万円かかった場合は、自己負担は約8万円、自己負担割合は8%となる。
そのほか、特に所得の低い人(住民税非課税の人)については、自己負担限度額を従来の水準(35,400円)に据え置くなどの配慮も行っている。
1か月あたりの自己負担限度額
※ ( )内の額は1年間に4回以上高額療養費の支給を受ける場合
| |
制度改正前
〜2002年9月 |
制度改正後
2002年10月〜 |
上位所得者
(月収56万円以上) |
121,800円+1%
(70,800円) |
139,800円+1%
(77,700円) |
| 一般 |
63,600円+1%
(37,200円) |
72,300円+1%
(40,200円) |
低所得者
(住民税非課税) |
35,400円
(24,600円) |
据え置き |
具体例 (一般の人の場合)
| |
(医療費) |
(医療費×3割) |
|
(実際の自己負担額) |
| 感冒(かぜ)で外来 |
5,090円 |
1,530円 |
→ |
1,530円
(30%) |
| 虫垂炎で7日間入院 |
264,080円 |
79,220円 |
→ |
72,530円
(27%) |
| 胃がんで30日間入院 |
1,690,130円 |
507,040円 |
→ |
86,790円
(5%) |
|