日立製作所中央研究所は、、昭和大学と共同で、胃部X線検査における聴覚障害者向け情報提供システムを開発した。
同システムは、通常、検査技師が音声で伝える被検者への指示を、手話アニメーションと文字およびイラストを合成した動画像として、X線検査装置に取り付けた3つの液晶モニタに表示するもの。これにより、音声による指示を受けることが困難だった聴覚障害者も、検査技師からの指示を理解することが容易となり、安心して検査を受けることができるようになる。また、検査技師が、検査の途中で被験者の側に行って指示を与える必要がないため、スムーズに検査を進行することが可能となる。
現在、日本国内の聴覚障害者数は約35万人だが、障害者手帳を交付されていない難聴者も含めると、約600万人にのぼるといわれている。聴覚障害者が健康診断を受ける場合、手話で対応できる医師や検査技師のいる検診機関はまだ少ないため、多くの場合、手話通訳者による通訳、あるいは筆談によって、医師や検査技師とのコミュニケーションがとられている。しかし、胃部X線検査では、離れた場所から音声によって体の向きに関する指示や注意が伝えられることが特に多いため、聴覚障害者にとって、受けることが困難な検査の一つとなってた。
そこで今回、日立と昭和大学は、聴覚障害者の人々が胃部X線検査を受ける際に、検査技師からの指示内容を手話アニメーションと文字およびイラストにより表示する「聴覚障害者向け情報提供システム」を開発した。開発に当たり、実際の胃部X線検査において検査技師から出される指示内容を分析し、システムに取り入れた。
開発したシステムの検査技師専用の操作パネル上には、指示内容が記載されたボタンが配置されている。検査中に、検査技師が選択したボタンに応じたコマンドが、技師用PCから被検者用PCに送信され、送信されたコマンドに対応する動画像が被験者用モニタに表示される。被験者がどの体勢からでも画面を確認できるように、取り付け角度の違う3台の液晶モニタが取り付けられている。
情報提供システムの構成

聴覚障害者の中には、情報認識の方法として、手話による方法を希望する人と文字による方法を希望する人の両方がいることが、独自に行ったアンケート調査の結果によってわかった。
このことから、同システムでは、より多くの聴覚障害者が自らにわかりやすい方法で情報認識できるよう、手話アニメーションおよび文字を併用して指示文を表示している。
手話アニメーションは、日立が開発した「手話アニメーションソフトMimehandII」を使用して作成している。また、体の向きや台の動作等、手話や文字だけでは説明が難しい指示もあるため、イラストによって実際の体勢を表す状態も表示している。
今回、聴覚障害者7名の協力により、X線撮影装置を使用して同システムの評価実験を行い、検査に必要となる指示内容の伝達が可能なことを確認した。また、文字も表示しているため、聴覚障害者のみならず、今後の高齢社会に向けて、聴力の弱い高齢者にも有効。
今後は、検査技師によるユーザビリティの検証や、実際のX線検査における試験運用を実施し、開発を進めていくとともに、他の検査への応用も検討していく。
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