国土交通省の交通バリアフリー技術規格調査研究委員会は、報告書「公共交通機関におけるハンドル形電動車いすの取扱いについて」を取りまとめた。
「ハンドル形電動車いす」は、日本工業規格(JIS)上は、車いすの一つとして位置付けられており、「JIST9203自操用ハンドル形」で規定されている。一般的には、「シニアカー」、「電動スクーター」などの呼称で呼ばれている。補装具給付制度、介護保険制度においても「普通型電動車いす」と位置づけられるなど、福祉関連制度では車いすとして取り扱われている。
2000年11月に施行された交通バリアフリー法では、高齢者、身体障害者等の自立した日常生活および社会生活を確保することの重要性が増大していることから、駅等の旅客施設・車両等の移動円滑化のための施設整備を行うことにより、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性・安全性の向上の促進を図ることとしている。
ハンドル型電動車いすについては、こうした旅客施設や車両等の施設整備の進展に伴い、今後その利用へのニーズが高まっていくことが予想されるが、これまで、公共交通機関におけるハンドル形電動車いすの利用に関しては、機器の技術的制約に加え、利用実態、利用にあたっての課題等が十分に把握されていなかったこともあり、多くの駅で利用が困難で、また、事業者ごとに異なる対応がなされていた。
このような背景から、同省では、有識者、ハンドル形電動車いすを使用している身体障害者、公共交通事業者、電動車いすメーカー、関係行政機関による研究会を設置して、議論を重ね、ハンドル形電動車いすの公共交通機関の利用に向けた技術的な課題の整理とその利用方針をとりまとめた。
現在販売されているハンドル形電動車いすは、屋外利用を想定し、公共交通機関の利用を想定して設計されておらず、回転半径、重量等の制約から多くの鉄道駅では利用することが困難となっている。
同方針では、ハンドル形電動車いすにより公共交通機関を円滑に利用するためには、移動円滑化基準や整備ガイドラインで想定する基本的寸法を満たす回転性能、小段差・溝の乗り越えのため介助者が持ち上げることを想定した取っ手、介助時や緊急時に介助者が手押しで誘導することができるよう操作しやすいクラッチ等が具備された機器開発が必要−−とした。
また、今後の対応としては、鉄道事業者、電動車いすメーカー等の関係者は、報告書に記載された対応方針が関係者の間の共通の認識であることを踏まえ、これに沿った対応を行うことを望む−−とし、国としても、別途、鉄道事業者に対しこの対応方針を通知するとともに、説明会を開催すること等により広く関係者に周知・普及を図っていくうえに、ハンドル形電動車いす使用者の便宜を図るため、駅ごとのハンドル形電動車いすの対応の可否についての情報提供についても検討していく−−としている。
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