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音声読み上げガイド機能を強化した身体障害者向け意志伝達装置を発売

−日立製作所、「伝の心」−

2003/11/06(Thu.)

 日立製作所ユビキタスプラットフォームグループは、肢体不自由に加え視覚にも障害がある人のQOL(Quality Of Life:生活の質)向上を支援するために、メニューや文章などの音声読み上げガイド機能を強化した身体障害者向け意志伝達装置「伝の心」を製品化した。

 今回発売する製品は、これまで販売してきたALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)患者向け意志伝達装置「伝の心」の音声読み上げ機能を強化したもの。画面を見なくとも、音声ガイドによる1スイッチ操作での意志伝達を可能にしており、四肢と視覚の両方に障害がある人が操作できる意志伝達装置の製品化は、国内では同製品が初めて。販売は株式会社日立ケーイーシステムズが11月10日から開始する。

 ALSは、脊髄の運動神経が侵され、全身の筋肉の萎縮が起こる進行性の神経筋難病。初期症状としては、足がもつれる、口がうまくきけないなどの症状が起こり、症状が進むと、歩けなくなったり、筆談や発語、さらには呼吸ができなくなる。しかし、脳機能は衰えないため、相手の言うことは分かっても答えることができない、自分の考えを伝えられないなど、コミュニケーション上の問題が起こる。病気の原因も治療法も不明で、厚生労働省の「特定疾患」に指定され、全国で約6,000人の患者がいるといわれている。

 同社は、1997年12月から、ALS患者の人を主な対象とした意志伝達装置「伝の心」を販売している。「伝の心」は、文章作成、身の回りの機器(赤外線リモコンで操作できる機器が対象)の操作、離れた人とのコミュニケーション(ポケベルやメールの利用)を基本機能としており、現在までに約2,000台を出荷している。操作原理は、カーソルがディスプレイ上に表示された文字盤やメニュー等の上を自動的に動く(この動作をスキャンと呼ぶ)ように設定しており、メニューや文字盤の文字など希望の項目にカーソルが移動したときに、患者自身がスイッチを押して、その項目を選択するもの。

 1999年10月には、「伝の心」を介して患者が自ら操作できる身の回りの機器の種類を増やし、本を読むための「ページめくり機」や家庭用テレビゲーム機の操作を行えるようにした。また、2000年8月には電子メール送受信やホームページ閲覧を可能に、2002年4月にはワープロソフトなどの汎用アプリケーションの利用を可能にするなど、患者のQOLの向上を実現するさまざまな機能の拡張を図っている。

 今回の機能強化は、視覚障害のある筋ジストロフィー症の人からの要望がきっかけで開発に着手したもので、2002年度の経済産業省「障害者等向け情報システム開発事業」の一環として開発した。今後、同社では、ALS患者の人に加え、脊髄損傷や脳血管障害など、より幅広い症状の人々にも利用できるよう、今後も操作性の向上や機能の強化に取り組んでいく方針。

 伝の心の標準構成は、ノートパソコンまたはデスクトップパソコン(「伝の心」ソフトウェアをインストール済み、搭載OS:Windows(R)XP、LAN機能標準装備)、タッチセンサー等スイッチ接続のための接続ケーブル、プリンタ、学習リモコンで、価格は500,000円、非課税品となる。

 価格は、「伝の心」の標準構成と販売会社提供スイッチ1つを合わせてのもの。この他に設置費用が別途かかる場合がある。厚生労働省の日常生活用具給付制度の対象となる人(身障者手帳の肢体不自由1級(四肢麻痺)かつ言語障害3級)が購入する際は、最大47万円の購入補助を受けることができる。なお、バージョンアップのソフトは販売会社にて無料で提供するが、販売会社の実施するバージョンアップ作業は有料となる。

 今回発売する「伝の心」は、漢字変換の詳細読み上げや文章の「カーソル読み」、「一文字詳細読み」等の機能を新たに追加するとともに、従来からあったメニュー項目や文字盤の音声読み上げについても機能強化を図った。

 「漢字変換の詳細読み上げ」機能では、ひらがなを漢字変換すると漢字候補一覧を表示し、その一覧をスキャンする。従来は、このスキャン時に漢字の音声読み上げを行っていなかったが、視覚に障害のあるユーザーが希望する漢字を正しく選択できるように、カーソルが漢字に移動したタイミングで、その漢字を詳細に読み上げるように機能を追加した。なお、同機能の開発・提供にあたっては、株式会社アメディアが開発した視覚障害者用の詳細読み辞書を使用している。

 文章の「カーソル読み」と「一文字詳細読み」機能では、従来、文章の読み上げは、「息子の名前は太朗です」を’むすこのなまえはたろうです’のように、文章をそのまま読み上げる「滑らか読み」だけをサポートしていたが、今回の機能強化では、文章中の一文字を確認できるようにするため、「カーソル読み」と「一文字詳細読み」を開発した。「カーソル読み」では、たとえば「名前は太朗」を’な’’まえ’’は’’ふと’’ほがらか’のように、一文字ずつ区切って読み上げ、「一文字詳細読み」では、「朗」は’ほがらかろうどくのろう’のように詳細に読み上げる。

 メニューの機能強化としては、従来は、スキャン時間間隔(カーソルがメニュー項目に来てから、次のメニュー項目に移動するまでの時間)が最も短い0.5秒の間に、メニュー項目の音声読み上げが終了するよう、先頭一文字だけを読み上げていた。今回の機能強化では、スキャン速度よりも読み上げを優先し、項目を最後まで読み上げてから次の項目にカーソルが動くように改良した。また、操作に慣れてきた人のために「設定されたスキャン時間間隔が経過したら、読み上げを中断して次の項目にカーソルが移動する」ように設定するなど、ユーザー一人ひとりの習熟度にあわせた設定を可能にしている。

 文字盤の機能強化としては、従来から文字盤の中の文字についてのみ音声で読み上げていたが、漢字変換の「漢」や編集の「編」などの機能的な文字については読み上げを行ってなかった。今回、機能的な文字についても、「漢」は’かんじ’というように読み上げるようにし、使い勝手を向上した。


伝の心
画像:伝の心


漢字候補一覧の音声読み上げ例
画像:漢字候補一覧の音声読み上げ例


一文字詳細読みの読み上げ例
画像:一文字詳細読みの読み上げ例


メニューの音声読み上げ例
画像:メニューの音声読み上げ例


文書作成用文字盤
画像:文書作成用文字盤


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