日本ALS協会は、日常生活用具の給付条件を満たさないALS(Amyotrophic
Lateral Sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)患者に重度障害者用意志伝達装置を貸し出している。今回、貸出用装置の設置支援をしている株式会社日立製作所、株式会社日立ケーイーシステムズに新たに日立電子サービス株式会社が参加したことにより、意志伝達装置「伝の心(でんのしん)」の設置にかかる期間を大幅に短縮した。
日常生活用具給付制度では、重度身体障害者用の意志伝達装置を給付する条件として、「学齢児以上で身体障害者手帳の交付を受けた者」「両上下肢機能の全廃と言語機能を喪失した者」「コミュニケーション手段として必要と認められる者」と定めている。
これらの条件すべてを満足しないと意志伝達装置は給付されないため、例えば、「手足が全く動かなくなっても、言葉が話せる」という場合は、条件を満たさないので給付されない。こうしたケースの場合、症状が進み人工呼吸器を取り付けて話せなくなり、身体障害者手帳に言語障害3級と明記されたときに初めて給付条件を満たす事となる。こうしたことから「給付が遅すぎる。これでは意志伝達装置の操作について質問したくても声が出ない」と患者から早期給付を望む声が広がっている。
ALS協会では厚生労働省に早期給付を働きかけるいっぽうで、給付条件を満たす前の患者に「伝の心」を貸出している。貸出用の機器は、日立製作所と日立ケーイーシステムズから「伝の心」出荷1000台を記念して2001年10月に寄付されたもの。日本ALS協会では、この10台を給付前の患者に貸出しを始めたが、希望者が多かったことから、2002年6月には2社からさらに追加寄付のあった10台と合わせて合計20台を貸出用として運営している。
この貸出機は、患者からの申込みがあると日本ALS協会療養支援部で審査する。貸出が認可されると、ALS協会は日立製作所に連絡を、日立製作所は日立ケーイーシステムズと分担して、ボランティアで貸出し希望者の自宅や病院等に出かけて貸出用装置の設置をしていた。遠隔地の場合、東京から出向くためにすぐには設置できないこともある。最も悲しいケースとして、認可から設置までの期間が2週間程度あいて、設置の翌日に患者が亡くなったことがあったという。
そこで、設置期間を短くするために、2004年11月から、全国のATMをはじめとする情報システム全般の保守をする日立電子サービスが「伝の心」の設置にボランティア参加を始めた。日立電子サービスの参加により、認可されてから3日以内の設置が、離島は除く全国どこででも可能となった。
また、「伝の心」操作説明を設置時に1時間聞いても、患者は説明された操作全部を覚えきれず、後から介護者がマニュアルを見て説明したり、日立製作所に問合せをするケースがあった。この問題を解決するために、日立電子サービスで作成したビデオテープ「「伝の心」設置編・操作編」を装置と一緒に貸出すことにしたことから、設置時に長い説明をしなくても、使う人のペースで「伝の心」の操作を勉強しながら使えるようになり、患者に喜ばれている。
日本ALS協会の意志伝達装置貸出に日立グループ3社がボランティアで協力することにより、給付前の患者が意志伝達装置を迅速に使えるようになった。日本ALS協会では、今回の企業支援の輪をケーススタディとして、これからも企業との連携を広げていく考え。
|