独立行政法人産業技術総合研究所の情報技術研究部門坂上勝彦部門長と同部門ユビキタスビジョン研究班佐藤雄隆研究員は、厚生労働省国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所の協力を得て、最新の画像センシング技術を用いたインテリジェント電動車いすを開発した。
障害者や高齢者のQOL向上のための技術開発は社会的に重要な課題で、まさに最先端のIT技術の活用が望まれる分野。近年電動車いすの普及により、従来は外出が困難であった障害者でも、外出できるようになりつつある。しかしいっぽうで、衝突・転倒や移動中突然の体調不良などの事故も増加しており、走行環境における様々の危険を検出し安全な走行を確保する機能とユーザーの意図や異常を機械がキャッチする「ユーザーを見守る」ための機能の実現が望まれている。
自動車においては、追突の危険性を事前に予測して自動的にブレーキをかけたり、自動的に前走車に追従するなどのインテリジェントシステムがすでに開発され、実用化されている。このような機能は障害者や高齢者がユーザーとなる電動車いすにおいても重要だが、道路を走行する自動車と異なり、電動車いすは人混みなどを含む様々な生活空間での共存が前提となるため、その実現のためには次世代のセンシング技術を用いる必要があった。
そこで、360度全く死角の無い全方向のカラー動画像と物体までの距離の情報(3次元情報)を、同時かつリアルタイムに取得する能力を持つ「全方向ステレオシステム」を電動車いすに搭載し「走行環境における危険検出」「ユーザーを見守る機能」など、ユーザーを支援するための様々な機能を持つインテリジェント電動車いすを開発した。
同研究は産総研と国リハ研などが中核機関となって推進している独立行政法人科学技術振興機構の科学技術振興調整費「障害者の安全で快適な生活の支援技術の開発」(2004年度〜3年間)の一部で、技術のみ先行するのではなく、ユーザーに関する深い知識を持つ国リハ研とのディスカッションを生かしながら開発が進められている。
なお、全方向ステレオシステムは、JSTの岐阜県地域結集型共同研究事業(産総研佐藤雄隆研究員が前職で参加)で世界に先駆けて開発されたカメラシステムで、今回のプロジェクトにおいてその先端的成果の障害者支援への応用に関する研究が行われたもの。
今後は、実走行実験を重ね、走行環境危険検出機能の高度化を進める方針。また、今回開発した試作機は全方向のカラー動画を無線LANで外部に配信する機能を持つが、今後は携帯電話回線で配信する実験を行い「遠隔支援」機能の可能性について検討を行う予定としている。
インテリジェント電動車いす

全方向ステレオカメラ

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