沖電気工業株式会社は、ETCや商用車管理システム等の路車間通信に用いられる狭い範囲を対象とした通信方式であるDSRC車々間通信システムを世界で初めて携帯電話に組込む「超小型DSRC無線モジュール」を開発した。
また、同モジュールを搭載した、歩行者の安全支援を可能とする世界初の携帯電話端末(安全携帯端末)の試作に成功した。「安全携帯端末」は、歩行者自身の位置を周辺車両へ通知するとともに、「DSRC車々間通信システム」を搭載した周辺車両の位置情報を取得することが可能となり、高齢者・子供など歩行者の安全に貢献することができる。
現在、安全・安心な道路交通の実現に向けて、路車協調、車路車(車々間中継器)通信を含めた安全運転支援用車々間通信システムの開発が進められている。内閣府告示の「IT新改革戦略」では、歩行者の交通事故死者数削減に貢献するための「歩行者・道路・車両による相互通信システム」について、官民連携により2010年度までに必要な技術を開発すると謳われている。
同社では歩行者や自転車乗用者などの交通弱者に対する安全性の向上実現に対して、現在、国民の80%以上に普及している携帯電話を活用することに着目した。
試作した「安全携帯端末」は、「超小型DSRC無線モジュール」により実現するDSRC車々間通信機能とGPS位置測位機能を、携帯電話のGSM機能と連携させる。同端末を持つ歩行者は、車々間通信装置を搭載する走行車両と各々独自に自分を中心としたDSRC無線エリア(半径数百メートル程度)を構成し、そのエリア内に自分の位置情報を一定時間間隔で発信する。互いの位置が接近し、双方からの受信電力が規定値を超えると相互に位置情報を常時交換する。また、相互の位置関係により交通事故発生の可能性が高い場合には、事前に注意喚起を行うことができる。
将来的には、交換した位置情報と、その時間変化から相手の挙動を瞬時に解析するものとする。自分への異常接近の疑いがあれば、携帯電話側ではバイブレーション機能などにより、また車々間通信装置側では音声ガイダンス機能などによりそれぞれ歩行者とドライバーに危険予防を促すことが可能となる。
同社では、「IT新改革戦略」で計画されている2008年度からの安全運転支援システムの官民合同の大規模実証実験と、2010年度からの運用開始に向け、商品化開発を行って行く。
また、車メーカとの連携を一層深め、車の安全運転支援アプリケーションに加え歩行者向け安全支援アプリケーションの開発と、DSRC無線モジュールのより一層の低消費電力化・小型化やユーザインタフェースの向上、大規模実証実験へ対応するために3G携帯、PHSや無線LANとの一体型携帯端末へ機能拡張していくほか、海外でのDSRC規格であるIEEE802.11pへの拡張も計画している。さらに、従来から取り組んでいる車の安全運転支援アプリケーションの更なる開発も積極的に行っていく。
システム構成

運用イメージ

問い合わせ先:システムソリューションカンパニー無線技術研究開発部
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