独立行政法人国民生活センターは、販売サービスに関する調査も含めた「通信販売の補聴器等の安全性や補聴効果」についての概要を公表した。
補聴器は、使用目的、効能または効果を「身体に装着して、難聴者が音を増幅して聞くことを可能とすること」とされる管理医療機器で、高齢化が急速に進展する中で国内の出荷台数は増加傾向にある。
補聴器を装用して十分な効果を得るためには、個人の難聴の程度や生活環境、使用環境等に合わせた適切なフィッティングが非常に重要とされる。補聴器の販売を行うためには医療機器販売業の届出が必要だが、補聴器のフィッティングに関する専門的な資格はなく、業界の自主的な認定制度等に委ねられている現状。
いっぽうで、インターネットやカタログ等の通信販売でも、補聴器が数多く販売されている。通信販売で販売される補聴器は難聴者個人に合わせた調整がなされないため、十分な補聴効果が得られなかったり、出力される音が大きすぎる等の理由で耳に悪影響を与える可能性が考えられる。
また、医療機器ではないが、音を増幅できるとうたった「集音器」、「助聴器」等の名称の商品も通信販売で数多く販売されている。集音器等は難聴者を対象とした商品でないにもかかわらず、形状や機能が補聴器と酷似しており、難聴者が目的等を誤認して使用してしまう可能性がある。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、補聴器等についての相談が約5年間で1,403件(2002年4月〜2007年6月30日までの登録分)寄せられている。そのうち515件は「安全・衛生」または「品質・機能」に関する相談で、その多くは「聞こえが悪い」、「耳に合わない」など販売店におけるフィッティングサービスに起因すると思われる内容。販売形態でみると、通信販売で購入したものについて「雑音が入り聞こえない」、「効果が感じられない」、「故障しやすい」等の相談が複数寄せられている。
そこで、個人に合わせたフィッティングがなされることなく販売される補聴器と集音器等の問題点を明らかにするため、通信販売で販売される安価なものについて、安全性や補聴効果に関するテスト、モニターによる装用テストと表示の調査等を行うこととした。併せて、補聴器販売サービスの実態と問題点を調べるため、補聴器販売店に対するアンケート調査を実施し、消費者に情報提供することとした。
PIO-NETよせられた相談では、販売購入形態をみると、「店舗購入」が59.1%と最も多かったが、店舗以外での購入も全体の35%程度を占めていた。契約当事者の年齢をみると、70歳代と80歳代で全体の70%近くを占めていた。「安全・衛生」または「品質・機能」に関する相談の内容をみると、「聞こえが悪い」、「耳に合わない」など補聴効果に関する相談が多くみられた。相談内容を販売購入形態別にみると、「店舗購入」した補聴器等については、不十分若しくは不適切なフィッティングが原因の可能性がある相談や形状に関する相談が多くみられた。いっぽう、「通信販売」した補聴器等については、故障や初期不良と思われる相談が店舗購入に比べて多くみられた。
同センターでは、テスト対象10銘柄を選定し、安全性と補聴効果に関するテストを行った。また、軽度〜中等度難聴者を対象に、実使用の状況を想定したモニターテストを実施し、聞こえ具合を調べた。なお、テストにおいては、集音器等についても、補聴器と同様に補聴器に関する文献等を参考に評価を行った。
テスト対象銘柄としたのは、通信販売(インターネットやカタログ等)で複数箇所販売されている、比較的安価な、軽度〜中等度難聴者用との表示がある耳あな形(耳の穴に挿入して使用するタイプ)、耳かけ形(耳にかけて使用するタイプ)、ポケット形(本体をポケットに入れイヤホンとコードをつないで使用するタイプ)の補聴器5銘柄と、医療機器ではないが、音を増幅できるとうたった集音器等5銘柄、合計10銘柄。
テストの結果、出力される最大音が業界の出荷基準である120dBを超える銘柄が7銘柄あり安全上問題であると考えられた。また、最大音の平均値が軽度〜中等度難聴者にとって聴覚保護上十分安全だとされる110dB以下だったのは1銘柄のみだった
補聴効果については、会話音を増幅する能力が小さく、十分な補聴効果を得られない可能性がある銘柄が3銘柄あった。また、会話音の聞き取りに適さない周波数特性を持つ銘柄が7銘柄あった。8銘柄は、モニターが使用しているフィッティングを受けて購入した補聴器に比べて十分な補聴効果が得られなかった。
電池の寿命については、連続使用した場合、24時間程度で電池が消耗し、高額な電池代が必要となる銘柄が2銘柄あった。表示については、薬事法に基づく表示に不備のある銘柄が1銘柄あり、問題があった。また、集音器等の中に、誤認を与える可能性があるような表示がなされた銘柄があった。
「認定補聴器専門店(認定店)と、認定店を除く日本補聴器販売店協会加盟店(認定店以外の加盟店)、認定店・加盟店以外の販売店(そのほかの販売店)」の3種類に分類した補聴器販売店に対してアンケートを行ったところ、販売店の約40%が「そのほかの販売店」で、これらの販売店では資格を持たない従業員が補聴器販売業務に従事していた。
簡単な聴力検査設備はほとんどの販売店にあったが、詳細な聴力検査や補聴器の調整に用いられる設備・機器の有無には販売店の種類によって大きな差があった。設備、機器の有無は販売店の種類によって差があったにもかかわらず、販売時、販売後のサービス内容についての回答はほぼ同じで、矛盾していた。医療機関との連携体制は販売店の種類によって異なり、「そのほかの販売店」の52%は医師との連携を全くもっていなかった
同センターでは、消費者へ向けたアドバイスとして、「フィッティングを受けて補聴器を購入するように」「補聴器を購入する際は、業界の認定制度の下で一定の基準を満たした販売店で購入するように」「難聴者は、集音器等を使用しないように」といった項目をあげている。
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