東京都では、都内の特別養護老人ホームと介護老人保健施設の実態や課題を把握し、2009年度に予定されている介護報酬改定に向けた国への提言や人材育成・確保策等の参考とするため、「経営実態調査」を実施した。
定員規模についてみると、特別養護老人ホームでは「101〜150人」(29.7%)が最も多く、次いで「70〜99人」(28.1%)、「69人以下」(23.6%)の順となっている。老健では、「100人」(37.0%)が最も多く、次いで「101〜150人」(25.9%)、「70〜99人」(17.6%)の順となっている。
利用者の平均要介護度は、特別養護老人ホームが3.9であるのに対し、老健は3.2となっている。また、要介護度別の構成割合の平均像をみると、特別養護老人ホームでは「要介護5」(34.3%)が最も多く、次いで「要介護4」(33.8%)、「要介護3」(19.6%)の順となっている。老健では、「要介護3」(30.1%)が最も多く、次いで「要介護4」(28.3%)、「要介護2」(20.5%)の順となっている。
食費の設定についてみると、特別養護老人ホームでは「基準額と同額」が80.8%を占めているのに対し、老健では「基準額より高額」が92.6%を占めている。
居住費の設定についてみると、特別養護老人ホームでは居室形態に関わらず「基準額と同額」が最も多く、多床室では84.1%、従来型個室では71.8%を占めている。
いっぽう、老健では、多床室において「基準額より高額」が69.2%、「基準額と同額」が28.0%となっている。老健の従来型個室では、「基準額と同額」が85.6%を占め、「基準額より高額」は7.2%となっている。
利用者10名あたりの職員数(介護職員と看護職員数の計)をみると、2004年度においては、特別養護老人ホームは「4.50人」、老健は「4.74人」、2006年度においては、特別養護老人ホームは「4.58人」、老健は「4.81人」となっており、いずれも国の人員配置基準(利用者10名に対し3.33人の配置)の約1.4倍の職員を配置している。特別養護老人ホームについては、利用者の平均要介護度が高い施設ほど、利用者10名あたりの職員数が増加する傾向にある。
求人方法についてみると、特別養護老人ホーム、老健の90%以上が、「ハローワーク(職業安定所)の活用」(特別養護老人ホーム:95.5%、老健:94.4%)と回答。次いで回答として多いのは「学校(福祉専門学校等)との連携」(特別養護老人ホーム:78.0%、老健76.9%)となっている。
また、特別養護老人ホームは老健と比べ、「福祉人材バンクの活用」、「施設での募集広告の掲示」を求人方法として積極的に活用している。なお、職員採用のための年間費用(人件費を除く)としてどのくらい支出しているかを尋ねたところ、特別養護老人ホームでは平均701,812円、老健では平均1,118,254円だった。
在職中の職員の平均勤続年数をみると、特別養護老人ホームでは常勤の介護職員が平均5.1年、非常勤の介護職員が平均2.8年、常勤の看護職員が平均5.1年、非常勤の看護職員が平均2.7年となっている。
いっぽう、老健では常勤の介護職員が平均3.7年、非常勤の介護職員が平均2.1年、常勤の看護職員が平均4.1年、非常勤の看護職員が平均2.6年となっている。また、常勤の介護と看護職員の勤続年数は、特別養護老人ホーム・老健ともに、40%以上が「3年未満」となっている。
特別養護老人ホームの職員の年齢構成をみると、最も多い年齢層は、常勤の介護職員は「20歳代」(43.5%)、非常勤の介護職員は「30歳代」(22.8%)、常勤の看護職員は「50歳代」(39.9%)、非常勤の看護職員は「60歳以上」(31.3%)となっている。
いっぽう、老健の職員では、最も多い年齢層は、常勤の介護職員は「20歳代」(44.5%)、非常勤の介護職員は「30歳代」(26.5%)、常勤の看護職員は「50歳代」(30.8%)、非常勤の看護職員は「30歳代」(30.5%)となっている。
平均年齢をみると、特別養護老人ホーム、老健の介護職員は、常勤が30歳代前半で、非常勤が40歳代前半で、看護職員常勤では、非常勤ともに40歳代後半となっている。
職員の給与平均額をみると、特別養護老人ホームでは、常勤の介護職員が年間387.7万円、常勤の看護職員が年間497.1万円、非常勤の介護職員が時給1,014円、非常勤の看護職員が時給1,605円となっている。
いっぽう、老健では、常勤の介護職員が年間341.4万円、常勤の看護職員が年間492.4万円、非常勤の介護職員が時給1,063円、非常勤の看護職員が時給1,637円となっている。
緊急に解決の必要な課題を施設長に尋ねたところ、特別養護老人ホーム、老健ともに70%以上が「人材確保」を挙げている(特別養護老人ホーム:73.3%、老健:72.2%)。次いで多いのは「財務状況」(特別養護老人ホーム:13.2%、老健13.9%)となっている。
人材確保が困難な理由を施設長にきいたところ、特別養護老人ホーム・老健ともに「給与水準が低い」(特別養護老人ホーム:80.1%、老健:84.6%)が最も多く、次いで「業務内容が重労働である」(特別養護老人ホーム:70.6%、老健73.1%)となっている。
給与水準が低い理由については、特別養護老人ホーム、老健ともに「介護報酬(施設収入)が低い」(特別養護老人ホーム:98.0%、老健:98.1%)が最も多く、次いで「他の経費が圧迫し介護・看護職員の人件費に回せない」(特別養護老人ホーム:54.6%、老健71.2%)となっている。
人材育成に係る課題への対応としては、「人事体系の整備・改善」(特別養護老人ホーム:76.0%、老健:76.9%)が最も多く、次いで「長期的・安定的な雇用の提供」(特別養護老人ホーム:59.7%、老健50.9%)となっている。
利用率についてみると、特別養護老人ホーム・老健ともに95%前後となっている。2004年度と2006年度を比較しても、ほとんど差は見られない。特別区と特甲地では、特別養護老人ホーム併設の短期入所において利用率が100%を超えている。
収支差額率についてみると、特別養護老人ホーム・老健とも、ほとんどの施設で、2004年度と比べて2006年度は低くなっており、2005年10月と2006年4月の介護報酬改定による収支の悪化をうかがわせる。
定員規模別にみると、2004年度に比べて2006年度の事業活動収支差額率が高くなっているのは、老健の定員151人以上の施設においてのみ。
職員人件費比率についてみると、「委託費を含む」、「委託費を含まない」ともに、2004年度と比べて2006年度はほとんどの施設で上昇している。
「人事交流の有無」について尋ねたところ、特別養護老人ホームでは「ある」が30.7%、「ない」が67.4%、老健では「ある」が30.6%、「ない」が67.6%となっている。
「人事交流」がある施設についてその期間を尋ねたところ、「短期(1週間程度)の受入れ」が特別養護老人ホーム、老健ともに最も多く、それぞれ59.4%、42.4%となっている。
また、人事交流が「ない」と回答した施設にその必要性を尋ねたところ、特別養護老人ホームでは人事交流が「必要である」が68.2%、「必要ではない」が27.0%、老健では「必要である」が53.4%、「必要ではない」が39.7%となっており、「必要である」との回答が過半数を超えている。
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