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介護ジャーナリスト小山朝子の新介護論
連載/第三回 市民講座レポート(2)
浜田きよ子のやさしい道具−シニアライフを豊かにすごす−
消臭する縫いぐるみ

小山朝子の在宅介護はまかせなさい!!
第16回 タッチングの力
肉体的にはもちろん、精神的にも負担が多いと言われる在宅介護。
「毎日笑って」とは言えないまでも、いつもの介護がほんの少し楽になる、疲労と悩みがたまった暗い表情にふっと笑みがこぼれるようなコラムを現役介護家族の小山朝子がお届けします!
触れることでお年寄りが心を開く
 日ごと介護や家事、原稿書きに追われる毎日。
ストレスからかイライラが募り、逃げ場を探すように、先日マッサージを受けに行きました。

 そのときは、肉体的な気持ちよさよりもむしろ、精神的に癒された部分が大きかったように思えました。マッサージをしてくれた人の手が、私の背中を通じて「あんまりがんばらなくてもいいですよ〜」と言っているように感じたのです。
よほど疲れていたのか、その手の温かさに励まされ、涙が出そうになりました。

 さて、高齢者介護の現場でも、お年寄りの体に触れる「タッチング」の効用が注目されているのをご存じですか。

マッサージで体だけでなく心がほぐれることも
 タッチングには、冒頭で述べたマッサージなど治療的な意味合いのあるもののほかに、入浴介助や車いすやポータブルトイレへの移乗など日々の援助を目的とした道具的な意味合いのあるタッチングもあります。
そして、その人の感情に訴える、共感的な意味あいをもつタッチングもあります。

 デイサービスに出張し、お年寄りの足もみをしているリフレクソロジストのひとり、佐藤尋美さんは、「足に触れてマッサージをすることで、お年寄りが心を開いておしゃべりをしてくれることが多いのです。所用時間はひとり20分ですが、デイサービスでは職員が一個人に20分費やして話し相手をすることさえ難しいのが現状です。職員の方からは『○○さんは普段は笑顔を見せないのに、マッサージのときはニコニコしていますね』と言われることもあるんです」と述べています。

 お話を聞いて、佐藤さんは足もみという目的を果たしながら、その間、お年寄り個人と向き合って話を聞くという役割も担っているように思いました。
「たしかに専門的な知識や技術を必要としますが、力を入れずに足をさする程度でも、その人の心を癒すことはできるのではないでしょうか」と佐藤さんは話していました。
被災地でもマッサージボランティアが活躍
 タッチングの効果が期待されるのは、高齢者ケアの現場だけではないようです。

 昨今では、乳幼児に対するタッチングも注目されています。
両親や医療従事者が赤ちゃんに話しながらその肌に触れるほか、マッサージをすることで未熟児の体重増加がみられるようになったほか、健常児にも情緒安定、入眠時間の短縮、ストレスホルモンの減少などの効果がみられた例もあるといいます。
一方で、母親がタッチングを行うことで、母親自身に対しても母性の意識を育てるという効果が期待されているといいます。

 先述の佐藤さんとともに活動しているリフレクソロジストの青木杉子さんは、新潟県の中越地震の発生後、被災地へ赴き、マッサージのボランティアとして活動していたといいます。彼女は以前に中越地区住んでいたことがあり、自分でもできることはないかと、いてもたってもいられなくなったそうです。

「当時は地震発生から一週間しか経っていないこともあり、その恐怖とストレスからか、ボランティアの方々が被災者に要望を聞いても、ただ聞くだけでは、遠慮しているのか口を開かない方が多かったようです。
 ところが実際に、老若問わず被災者の足に触れ、マッサージを始めると体がほぐれるのと同時に心もほぐれていったのか、『取材のヘリコプターがうるさい』といった不満や、地震発生時の恐怖感を話し始めた人も多かったですね。そして、『マッサージだけでなく美容師さんの援助もあったらいいのに』といった要望を出す人もいました。マッサージのボランティアは人気が高かったようですね」(青木さん)

タッチングには慎重さも必要
 最後に、タッチングについて気をつけなければいけないことにも触れておきたいと思います。

 お年寄りにとっては、若い職員から頭をなでられたりすることを不快に思う人もいるでしょうし、あまりべたべたと馴れ馴れしく触れられることを不愉快に感じる人もいるでしょう。

 さらに、欧米の映画などを見ていると、初対面のときに握手をかわす、抱き合うことで喜びを共有する、相手をなぐさめる、励ますといったシーンを目にしますが、日本の場合はこうした日常的なタッチングを行う機会は欧米ほど多くはありません。
それだけに、とくにお年寄りなどに対しては、慎重さも必要だと言えるでしょう。

 また、タッチする部分によってはセクシャルハラスメントになる場合もあるので気をつけたいものです。

 今回、タッチングをテーマに書きたいと思った理由は、自分自身の体験によって、タッチングの「力」を実感しているからです。

 私の祖母は気管切開をしており、発声自体が難しい状況にありますが、現在、発声による会話が難しくても、タッチングによってコミュニケーションをはかっているといっても過言ではありません。

 祖母にはリハビリをかねて、私の頭まで手を伸ばしてもらい、頭に触れてもらうのですが、こうしてタッチされることで、介護している私のほうが祖母の手から力をもらい、癒してもらっていると感じることがあるのです。
※本文中で紹介したリフレクソロジスト、佐藤さん、青木さんをはじめとする4名で出張リフレクソロジー「足健倶楽部」を主宰し、高齢者施設などへ出張施術を行ったり、足もみ健康法の指導を行っています。
関心のある方は、salon-waraku@nifty.comへ。

プロフィール
小山さん写真 小山朝子(こやまあさこ)

ジャーナリスト。東京都目黒区生まれ。
高齢者の介護をテーマにした執筆活動を行う。
各地で講演を行い、さまざまな媒体でコメンテーターをつとめる。
祖母を約9年にわたって介護した経験から、一当事者として発言する機会も多い。

「読売新聞」、「朝日新聞」、「日本経済新聞」、「産経新聞」ほか、多くの媒体で紹介される。
著書は「朝子の介護奮戦記」、「イラスト図解アイデア介護」(全5巻)、「ケアマネジャーになるための本」ほか。
出演番組はNHK「福祉ネットワーク」、ニッポン放送「ラジオケアノート」など。
2006年〜2007年、「東京新聞」、「中日新聞」にコラム<知っ得 介護>を掲載。
一般誌、経済誌、ビジネス誌のほか、介護専門職向けの情報誌、ウェブサイトなどでも連載多数。

東京大学医療政策人材養成講座第4期生

2008年7月刊行の新刊  たちまち重版決定!
「ケアマネジャー 必須書類の書き方  完璧マニュアル」
(長谷憲明・監修、土屋典子、小山朝子・編著、財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団・企画協力ひかりのくに株式会社)

小山朝子の公式サイ

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