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介護ジャーナリスト小山朝子の新介護論
連載/第三回 市民講座レポート(2)
浜田きよ子のやさしい道具−シニアライフを豊かにすごす−
手軽で安心な防炎タオル

介護ジャーナリスト小山朝子の新介護論第一回 期待される療養通所介護(1)
介護保険制度が改正され、2006年4月から全面施行されました。
介護を社会で支えるという基盤は整ったものの、制度ではカバーできない問題も少なくなく、介護サービスの利用者や家族のニーズが汲み取られていない実情も感じます。
行政、介護を担う家族、在宅・医療機関・施設の現場で働く関係者、そして地域の住民やボランティアなどのインフォーマルな力が、ひとつの輪となって介護を支える社会をつくるために――。
このコーナーでは、「これからの介護」をみなさんとともに考えていきたいと思います。
連載:医療ニーズが高い人と家族が自宅で安心して暮らすために
医療を必要としながら在宅で生活している人とその家族にとって、現在の介護保険によるサービスは果たして充分といえるでしょうか。
「在宅重視」の方向性にあるとはいえ、医療が必要な状態になった人を支える家族は「自宅でも安心して介護ができる」基盤が整っていなければ、在宅での介護を決断できない場合もあります。
医療が必要な人とその家族が自宅で安心して暮らすためにはなにが必要かを考えます。
医療ニーズがある要介護者を支える家族の本音

 祖母がクモ膜下出血を発症して9年、在宅で介護を始めてから8年になり、我が家では介護保険制度が始まる前から在宅で介護をしています。
 先日、介護する家族の立場で取材を受けました。そのとき「介護保険制度が始まってから介護は楽になりましたか?」という質問を受け、一瞬答えに詰まってしまいました。
 介護保険制度は、介護の社会化、つまり家族だけに担わせるのではなく社会全体で担いましょうという目的を果たしたといえます。
 しかし、とくに医療を必要とする、要介護度が重い人の場合、我が家の経験からいっても「介護保険制度が導入されたことで介護の負担が軽減された」と実感している人は果たして多くいるのでしょうか。「それほど実感できない」という我が家のような感想をもつ人もいるのではないでしょうか。
痰の吸引の必要性から家族が自由に外出できない

 9年前、クモ膜下出血で右半身まひと失語症の後遺症を負った祖母は、その後、脳梗塞や心筋梗塞を起こすなどして、現在はベッドから離れられない状態です。胃から直接水分を補給するための胃ろう、呼吸を楽にするための気管切開もしていて、頻繁にタンを吸引する必要があります。
 本人の体調や、湿気が多いか少ないかなどその日の気象に査収される場合もありますが、タンの吸引は1時間の間に数回必要なときもあり、介助者である私と母がふたり同時に家を開けることはできません。
 母も私も仕事をもっていますが、母は週に3日勤務する形態をとっており、母の勤務があるときは私が自宅で祖母を介護します。
 一方、私は上記3日以外の曜日に取材や講演などの外出の予定を入れることになります。介助者が二人であること、また私の職業が会社に勤務する形態でなくとも可能なことなどから自宅で介護を続けていますが、医療が必要な人を介助者ひとりで、しかもその介助者が収入を得なければならないような場合には在宅介護を選択するのはなかなか困難なことといえます。

 私と母が自由に外出したいという希望を満たすには、それこそ訪問看護のサービスを毎日利用しなければいけません。しかし、毎日一定時間訪問看護を利用するとなると、たとえ要介護5であっても支給限度額はオーバーしてしまい、費用負担が重くなります。
 毎日でもなくても、せめて「たまたま」私と母の外出の予定が重なってしまったときだけでも訪問看護のサービスが柔軟に利用できればと思うのですが、「緊急時訪問看護加算(利用者や家族からの看護に関する相談などに対して、常時対応できる体制について事業所が算定できる)」があるにせよ、一般にはケアプランに基づき、何曜日の何時から何時までという決められた枠外の利用については、柔軟にサービスを利用できるシステムにはなっていません。

 一方、現在は、訪問看護師でなく、訪問介護員(ヘルパー)による痰の吸引もその是非が問われています。
 2005年3月の厚生労働省による通知において、「痰の吸引は医行為であるが、家族の負担軽減を考えればやむを得ない措置として、一定の条件(家族による文書の同意や医師や看護師の指導のもとで適正に行われることなど)のもとで行われる場合には、家族以外のヘルパーなども痰の吸引を行うことが容認される」としています。
 しかし、現状では介護職の痰の吸引における技術や知識にばらつきがあり、また上記の訪問看護の利用と同様に「頼みたいときにいつでも頼める」サービス体制の確保がなされないことから、家族が安心して外出できる状況にはなっていないように感じます。
デイサービスの利用も困難

 一方、介護する家族のレスパイト(休息)という点においては通所介護(デイサービス)の利用が考えられますが、デイサービスなどにおいては、気管切開などをしている場合、「対応できるスタッフがいない」と断られるケースも多いのが現状です。
 また、医療が必要な人の場合、短期入所生活介護 (ショートステイ。介護老人保健施設や療養病棟のある病院、診療所などが、介護が必要な人に一定期間入所してもらい、看護や医学的管理もどで介護を受ける)の利用も考えられますが、短期間であっても、とくに医療が必要な人の場合、普段の本人の様子を知らない職員にケアをしてもらうことでの不安もあります。例えば、気管切開をしているといっても、切開部に挿入されているカニューレ(管)はいろいろなタイプがあり、その扱い方も異なります。そのため、家族がショートステイを行う施設や病院に出向いて職員に普段どのようなケアをしているのか、どのような医療処置をしているのかを一から説明する必要があります。
訪問看護の多機能化が切り札に

 こうしたときに、普段その人の普段の様子を知る訪問看護師が、家族の代わり、あるいは家族とともにショートステイを行う施設や病院に出向いて説明をしてくれたり、ショートステイの利用期間中、その人の様子を伺いに出向くなどしてくれれば、家族も安心でき、負担も軽減できます。
 医療が必要な人が在宅で安心して生活するために、私が最も期待するのが「訪問看護の多機能化」です。
 訪問看護事業所から利用者宅へ出向くだけでなく、出向く先は地域の病院であったり、ショートステイを行う施設や病院にも足を運ぶ。さらに、利用者宅に出向くだけでなく、訪問看護事業所やその近くで通いや泊まりが可能であれば、家族は安心できます。
 現在その理想のかたちに最も近いのが、2006年4月から創設された新たなサービス「療養通所介護」です。

プロフィール
小山さん写真 小山朝子(こやまあさこ)

ジャーナリスト。東京都目黒区生まれ。
高齢者の医療、介護をテーマに執筆を行う。
祖母を約9年にわたって介護した経験から、
一当事者として発言する機会も多い。
現在は全国各地での講演活動に力を入れ、
新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどでのコメンテーターもつとめる。

「朝子の介護奮戦記」、「イラスト図解アイデア介護」(全5巻)、「ケアマネジャー 必須書類の書き方  完璧マニュアル」ほか著書多数。
出演番組は、NHK「福祉ネットワーク」、ニッポン放送「ラジオケアノート」など。

財団法人日本訪問看護振興財団 「在宅ケア・訪問看護エッセイ」
最優秀賞受賞(2006年)
高齢者アクティビティ開発センター 講師・評議員
東京大学医療政策人材養成講座 第4期生

小山朝子の公式サイト

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