医療提供者による「家族の声に耳を傾けた」実践
講座の後半では、医療提供者3名による講演が行われました。

坂本由恵さん
医療法人社団 三医会 訪問看護ステーション長で、看護師・ケアマネジャーである坂本由恵さんからは、<医療依存度が高い在宅療養者が利用できるデイサービスの実践>をテーマに、人工呼吸器の装着が必要な要介護者などを受け入れるデイサービスの運営に関わるお立場から、その成果と利用者の声、実践における課題、さらに「呼吸療法士認定士」の資格を取得し 利用者宅で排痰ケアを行うなど、専門性をいかして 訪問看護のサービスを提供することの重要性を伺いました。

大津陽子さん
次いで、財団法人 東京都保険医療公社 多摩南部地域病院 地域医療連携室 看護相談係長で看護師の大津陽子さんからは、<胃ろう造設者をささえるネットワーク構築の取り組み>をテーマに、地域医療支援病院として、多摩地区の病院間で胃ろう造設者や家族を支援するネットワークづくりの取り組みと地域医療連携室看護相談係のお立場から、退院調整の現状と課題についてお話頂きました。
患者・家族、医療提供者側にも一助となる説明ツール

大坪公子さん
3番目のゲストスピーカーである特定医療法人 大坪会 三軒茶屋病院院長、社団法人 日本女医会 理事で医師の大坪公子さんからは<在宅支援のための「たんの吸引」>をテーマにお話を伺いました。
社団法人 日本女医会では、在宅で介護を行う家族や医療関係者、ヘルパーらに向け、「たんの吸引」を安全に行なうための講習会を実施しました。
本講座では、在宅療養者のたんの吸引に関わる問題と課題、さらに講習会の参加者の声などをお話頂き、参加者の皆様にも模型をつかってたんの吸引の方法を説明したDVDをご覧頂き、その知識を深めてもらいました。

DVDでたんの吸引の方法をわかりやすく説明
私の祖母はクモ膜下出血を発症して1年後に気管切開を行い、その後、在宅で医療、介護を担うようになってから、たんの吸引を行ってきました。
退院前の看護指導を受け、その後専門書などを読んでも、そのしくみは理解しづらい点がありました。
しかし、上記のように模型やDVDを使って説明を受ければ、在宅患者やその家族も理解しやすく、安心して在宅で医療、介護を担える一助になるように思いました。
医療提供者側からの患者・家族に対する説明義務が問われていますが、説明に時間をかけても、その説明がわかりづらいものであれば、患者や家族は安心することはできないのではないでしょうか。 一方、医療提供側にも「自分の説明が患者や家族に理解してもらえただろうか」といった不安もあるかもしれません。
在宅医療を担う患者・家族に、こうしたツールを利用して看護指導を行っていくことは、説明を行う医療提供者側への一助にもなると思いました。
さまざまな立場の人が在宅医療・介護について考える場の必要性

会場からの質問に答えるスピーカー。右端が私(小山)
各スピーカーの講演後、参加者からは「経鼻経管栄養から胃ろうへ移行するにあたって不安がある」、「たんの吸引の方法を学びたい」といった質問や意見がありました。
平均在院日数が短縮化され、医療が必要な状態で在宅に戻る患者が今後増えると予想されるなか、このたびの講座のように、医療、介護関係者や在宅介護を担うご家族などが集って、在宅医療の現実と課題について意見を交流する場を設けることの必要性を強く実感しました。
しかし、実際に在宅で医療・介護を担うご家族はこのような場に参加することが難しい状況もあり、ヘルパーに留守を依頼し、同講座に参加して頂いたご家族もいました。
問題を提起したくても、あるいは情報を収集したくても、在宅で医療・介護を担う家族は、「外出がままならない現実」があることを私たちはまず知る必要があるのではないでしょうか。
一般の市民の方からは「在宅医療に関して関心をもつきっかけとなった」との感想もいただきました。
このような講座の参加者は、医療、介護関係者が中心となるものが多いように思いますが、一般の方に対して、在宅医療に関するわかりやすい情報提供を行っていくことも必要だと感じました。
講座開催にあたってお力添え頂いた財団法人をはじめ、各スピーカーの関係機関やNPO法人、スタッフとして参加していただいた有志の皆様に感謝申し上げます。
|